Otellというサービスがあります。
2024年12月31日にサービス終了してしまうので、今これを読まれてる時点では既に”あった”になる。
Otellは2021年3月に開始したホテルワーク予約サイトで、当時はまだまだコロナ禍。
1月に2回目、4月に3回目の緊急事態宣言が発令された、そんな頃のサービスの思い出話。
そんな折に「密を避ける」という目的でホテルワークというものが提唱されました。
ホテルにはだいたい無線LAN・有線LANが完備されているし、1部屋ずつ施錠できて、人が入ってこないということで
自宅でリモートワークした際の家族の乱入や、カフェでリモートした際の情報セキュリティ上の懸念がないため
冷え切ったホテル業界を支援する策としても名案に思えました。
実際、ホテルニューオータニのような名門ホテルでも取り入れられるくらい、流行った策でした。
Otellはそんな時勢に合わせて誕生したサービスです。
平日4泊5日で¥19,800〜、掲載されている5都県12施設は全て都心から2時間で行ける場所という手軽さ。
全室にWifi・モニター・テーブルタップを完備しているうえ、施設によってはオフィスチェアを入れている力の入れようで、
まさに「都会を離れて仕事してくる」というサラリーマンの見る夢のようなサービスでした。
しかも、Otellは大きな儲けを狙っていませんでした。
ホテル側への資料には、「初期費用・掲載料0円」と提示し、宿泊予約の卸値との差額¥3,000だけがOtellの取り分のようでした。
それも、2023年末に始まったOtellアンバサダー紹介割というキャンペーンを使うと、¥3,000分のAmazonギフトカードをもらえたので
実質儲け0になっていました。だからサ終したのでは?
Otellが「日光市ワーケーション実施支援補助金」の対象になりました!なんと一律半額に。
— Fuji Akane (@fuji_akane) June 15, 2023
市の方から「ワーカーのリピート率も高く、地域で評判のサービスとなっています。」との連絡がありました。嬉しい🔥🔥 pic.twitter.com/HZRwveBmgk
私は最初、この日光市ワーケーション支援補助金の対象になったツイートを見て、
あまりの安さにびっくりして即予約をしていました。
そしてそのめっちゃ最初の予約の時から、メールの返信には事業責任者の富士さんの名前がありました。
2021年から始まったサービスで、2年たってまだ問い合わせに事業責任者が対応しているという点で、
結構少数精鋭で運営しているんだな、というのはわかります。
もともと、何泊売れようが¥3,000しか入らないのだから、何人もかけていられないんでしょう。
最終的に27施設まで展開していますが、仮にそれが全てOtellのみで販売されたとして、
月に4泊5日が4回、2泊3日でも8回しか販売できないのだから、月の利益で¥648,000というのが最大限になってしまいます。
最初の12施設で考えたら¥288,000です。社会保険とか考えたら、1人で回しても赤字の事業です。
では掲載施設数を増やせば良いのかと言われると、それがそうでもなさそうに感じました。
普通のインターネット旅行予約サイトでは、掲載されている部屋は基本的に、申し込んだ時点で予約が完了している。
それがOtellでは、予約をリクエストすることはできても、予約することはできない。
Otell上で予約をリクエストすると、48時間以内を目処にホテルから承認/非承認の連絡がくるという流れになっており、
要するにホテル側の連絡をもとに予約の承認/非承認の連絡を人力で行っているのではないか?と推測します。
本来、OTA(Online Travel Agent)はとホテルで部屋の在庫数を共有するために、
「サイトコントローラー」と呼ばれるシステムに接続して双方に情報が連携されるようにしています。
ただし、サイトコントローラー開発会社がOtellに対応していなければ、
システム連携ができず部屋の在庫数が共有できません。
Otellは小規模サービス、というか集客サイトをWordPressで作っただけで裏側は人力?なため
予約サイトコントローラーに接続することができず、
ホテル側も面倒だし、旅行者は待たされてストレスだし、Otell的にもボトルネックで
運営スタッフは板挟みで最悪の状況だったのではないでしょうか。
この、宿泊先が確定しないという状況が旅行者にもたらす悪影響というのが、交通手段の高騰化・減少です。
待たされることによって○日前予約割引が使えなくなったり、そもそも予約が埋まって取れなくなったりするので、
相当前もって日程をおさえておく必要があります。
というか、この「ホテルワーク」ひいては「ワーケーション」を必要とする、平日にリモートワークしている層が
そんなに前もって日程を抑えておけるとは限りません。
私がそうなのですが、「今仕事が片付いてるから今旅行に行きたい」 みたいな欲求が解消できないのです。
なんなら今まさに、2日前に予約した7日後の予約リクエストに対し、返信が返ってきていない。
これを書いている今日は土曜日ですが、仮に月曜に非承認の連絡がきた場合、私は宿無しになります。
一旦往路の交通手段は抑えて、復路は未定にしています。最悪の場合、日帰りになることも考えて。
これを、ホテルが悪いとも簡単に言えません。
普通のOTAであれば在庫は自動で反映されるんですから。
でもそれが、Otellを使いづらい一因ではありました。
それでも私がOtellを利用したのは、実は価格の安さだけではなく、掲載数が少ないという点が好きだったからでした。
上記の問題もあって、ホテル予約サイトとしてはどんどん掲載施設数が増えていくべきなのでしょうが、検索する側としては「あの施設空いてるかな?」ぐらいの気持ちで目的のページにすぐ辿り着けるのはメリットでした。
基本的に変わらない中で、月一で届くメルマガで新規掲載ホテルが紹介されると、1ホテルずつしっかり興味を持つことができて、情報の入ってくる量がちょうどよかったです。そのため、本来なら邪魔くさく思ってしまいがちなメルマガなのにも関わらず、最後までしっかり読み込んでいました。
さらに、マイステイズ・ホテル・グループ施設を掲載するようになったことにより、「綺麗で良い温泉宿が揃ってる」のも好きでした。リモートワークをちゃんとやると、普通に観光に行く時間とかないので、ホテルの中だけで楽しめるのが最も重要になってきます。
熱川オーシャンリゾートや亀の井ホテル日光湯西川、IRH湯楽城はマジでハイクオリティだった…
伊東の暖香園もすごくいい宿で、しかも伊東自体が結構栄えていて食事に困らないというのもよかったです。
街も含めて楽しめるでいえば、三島にあるゲストハウスgiwaは本当に魅力だらけの街中で、古い日本家屋だから床がたゆんたゆんしていた点以外は最高でした。
Otell Selectになっていない宿も結構行こうとしてて、11月に予約したのはHOTEL BAY GULLSという関西国際空港の近くにあるホテルです。
これは主な目的としては京都旅行だったのですが、1時間半くらいで行き来できるので
関東で働いてる人が熱海行くぐらいの所要時間でいろいろ行けてよかったです。
人生は短く、いろんなところに行っておきたいと思っている人にとっては、ちょうどいい「行きたいところリスト」であったOtellというサービス。
47都道府県制覇するのに近い感覚で、Otellの宿全部いくみたいなことが、リモートワークに寛容な職場にいればできたのかもしれません。