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まばたき禁止

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これは、「鏑木ろこSS人狼」へ応募したSS作です。


数歩先も見えぬほど、怪しく立ち込める霧。朱く禍々しく朽ち果てた柵や門。
何度瞬きをしても醒めぬ悪夢のような光景で、私は立ち尽くしていた。
いつから、どれくらいここにいたのだろう。
思い出せないのは脳内まで濃霧が発生しているせいか、初めから何も知らないのか。
ぶんぶんと頭を振り、ようやく思考が動き出したところで私はまず手に目をやった。
右手、ある。左手、ある。特筆することといえば、左手にはアクセサリーがついているくらいで、既視感しかないただの私の手だ。

では足はと、見やすいよう出した左の足からジャラっという音と圧迫感。足枷だ。終わった。こんなヤバイ雰囲気だから敢えて地の文のように冷静に実況していたというのに、足枷がついてたらそんなのもう終わりだよ。いやむしろ始まりかもしれない。前に進むんだ鏑木ろこという女は。そうだ私は鏑木ろこだ。思い出したわ。
鏑木は自慢のトークで自分を奮い立たせると、足枷に繋がっていた2kgほどの鉄球を両腕で抱えながら、門を押し開いて暗闇の奥へと進んだ。

意外にもすぐに建物を見つけることができ、その中には小さいながらもランプの明かりがついていた。明かりは不自然に一方へ誘導するよう配置されているが、あったかい対応に感謝しながら鏑木は階段を上がっていく。2階に着いて玄関の方を見下ろしてみると、さっきまでついていた明かりが消えていた。鏑木はもう引き返せない。

わたしを導くランプは、廊下の突き当りで途切れた。そこには部屋へ続くドアしかない。
開ければ確実に何かが起きる。開けなければ、明かりが消え一切の猶予もない暗闇だ。
わたしは、ありもしないセーブを心に刻み、ドアノブに運命を託した。

ゆっくり、ぎゅっと瞑った目を開くと、たゆたう蠟燭の火とそれに照らされる人影があった。
その者は、わたしに気付くとこちらを向いて、その顔を明かりの下に晒した。
その顔は、姿はまるで鏑木ろこだった。上から下まで今の私と同じ、体も服装も鏑木ろこで、わたしじゃない何かがそこにいた。…いや、違う。すべてが左右反転している。手のアクセサリーが右についている。わたしとこの鏑木はすべてが反対だ。
暗闇にぽつんと、鏡があるようだ。しかし表情は、わたしの意志に反して動いている。

鉄球を降ろし、声も出ないわたしを見て、鏑木ろこは安心したように笑みをうかべて、
入れ替わるように部屋を出ていった。

遠くでぎいいと、門が開く音がした。

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右ねじ
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右ねじ
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