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口頭語頭

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ある男が、孤島にやってきた。
名を、後藤と言った。
骨董品を扱う商店を営んでいたが、
仕入れた品が尽く売れず
「休んでいたほうが儲かるんじゃないか」と妻に小言を言われ
まるごとほっぽって来てしまったのだった。

はじめは仕事から開放された喜びに浸っていたが、
日毎に自然との戦いに向き合わざるを得なくなり
今日はようやく見つけたゴートを仕留め、
拾った古刀で捌き、
鍋に入れてコトコトと煮込む。
毛皮を剥げば、コットンのような肌触りではないにしろ
土産代わりのコートにはなるだろう。

コトッ
響く音が教えてくれる。俺はいま孤独だ。

煌々と輝く月を見上げると、
高騰すると信じて買った壺の形に見えた。
妻が目を留めるなんて稀事を起こさなければ、
俺はこんな事にはならなかった。
殊の外売れず方方を駆けずり回る俺を見て、
あいつ、無責任にも「まぁ、楽しそうだこと。」などと言いやがった。
他人事みてぇに言いやがって、
世迷い言もいい加減にしろ。

戯言を並べてはいるものの、酒もないし眠るには早すぎる。
暇つぶしに琴を作り始めたが、思いの外様になってきた。
事と次第によっては、帰ってからの商売になるかもしれないな。
やはりこの男、商売人というだけはあって、なかなか前向きである。
ことこれに関しては、妻も認めるところであった。

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右ねじ
著者
右ねじ
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